コロナを契機とする不可逆な変化の可能性と化学・素材業界におけるマクロシナリオでのリスク見定めの重要性

コロナを契機とする不可逆な変化の可能性と化学・素材業界におけるマクロシナリオでのリスク見定めの重要性

デロイト トーマツ コンサルティングでは素材・化学メーカーの経営管理に関する課題を踏まえつつ、経営管理の変革の方向性とCOVID-19流行の影響を整理しました。COVID-19は全世界でこれまでの常識を根底から覆しました。まずはこの世界的パンデミックを経て、今後待ち受ける不可逆な変化の可能性を大きく”政治・経済”、”社会構造”、”生活者”という3つの観点から考えます。

COVID-19の世界的流行を機に待ち受ける不可逆な変化の可能性

政治・経済の観点から

1. 米中二極構造の鮮明化:

2. 脱中国一極集中:
政治・経済という観点においては、COVID-19パンデミック以前より危惧されていた米中の対立構造が、更に鮮明になりもう後戻りできないところまで来ていると考えられます。コロナ禍において多くの企業が火急の課題と捉えているサプライチェーンの見直しの際にも、脱中国一極集中が図られるでしょう。

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社会構造の観点から

3. 監視・管理社会化:
濃厚接触者の追跡アプリのように、有事下においては、プライバシーを尊重しつつも個人の動きをしっかりと監視することが容認される流れや、ビジネスや個人の活動がオンライン、リモートを中心に展開されていく中で、データをこれまで以上にしっかりと管理していく必要性や、それに伴ってのサイバーセキュリティへの意識も、これから更に強まるだろうと考えられます。

4.生活のボーダーレス化:
例えば、一部のアジアの国々を除けばあまりなじみのなかったマスク着用や、ソーシャルディスタンスといった新たな生活スタイルが、全世界である程度画一化・定着していくでしょう。

5.行政からのパワーのシフト:
今回のCOVID-19対応に対して、国に怒り、憤りを抱いている人々が国に頼らなくなる、民間が更に影響力を持つといったようなパワーシフトが進む可能性も考えられます。

6.逆都市化:
これまで利便性などの観点から都市部に人気が集まり人口集中していたのが、これからは密集、密接が非常に高いリスクであるという認識の醸成、生活、仕事の多くをオンラインで済ませることができるようになることで、ライフスタイルが大きく変化し、都市部に居住する必要性は弱まります。それにより、機能及び人の生活が分散化していくでしょう。

生活者の観点から

7. 根源的・内的価値観の重視:
予期しえぬ未曾有の危機に直面したことで、これまでの人生観を見直したり、キャリア形成などの外的承認よりも大切な人との時間やプライベートの充実といった本質的に大事と感じるものに時間を使うようになるといった変化が生じてきていると考えられます。

8. 健康・衛生意識:

9. 公共・環境意識:
コロナ禍での経験を通じて、健康・衛生、更には公共・環境への意識が高まると考えられます。例えば、若年層を中心に、企業のSDGsへの取り組みを購買意思決定要素とする傾向が見られるなど、影響は顕在化してきています。

10. 安定志向:
今回のコロナ禍においては、経済的に大きなダメージを負われた方が非常に多くなっています。日本でも不況下において公務員の人気が高まるといった傾向があると言われることもありますが、そうした安定志向は今後、一定程度は高まると考えられます。

11. リモート・オンラインベースのライフスタイルの定着:
多くの企業が取り組みを本格化されたリモートワークですが、実際に試行してみると、思ったよりもリモートでも仕事が進められるということが、新たな発見としてあったのではないでしょうか。多くの企業が今後もリモートベースでの勤務を継続すると発表しており、今後もリモート・オンラインベースでの業務は継続・定着していくと見込まれます。また、ワークスタイルだけでなく、プライベートな面でも、例えば、実家への里帰りが制限される中で、フィジカルな移動ではなくオンラインでの帰省がなされるなど、生活のオンラインベースへのシフトが確実に進行しています。

12. シニア層によるデジタルエントリー:
東日本大震災後にも通信・情報取得を目的に60代以降のデジタルエントリーは加速しましたが、非常事態がより⾧期化するコロナ禍においては、遠隔医療やECなど、代替の効かない生活インフラとしての活用も加速・定着することから、シニアユーザーも順応していかなければならなくなります。

マクロなシナリオと化学・素材業界に与える影響

次に、コロナによる不確定要素を起点としたシナリオと、各シナリオに紐づく化学業界への影響を見ていきましょう。例として、「1. 人の意識/価値観の変化」、「2.経済的影響の深刻度」といった不確定要素がどのような影響を与える可能性があるかをご説明します。
たとえば環境対応に対しては“加速化”と“減退”という2つのシナリオが考えられます。パンデミックは気候、温暖化から大きな影響を受けるという発表もありますので、そうした情報を踏まえつつ環境対応が加速していくのではないかというシナリオ(a)、逆に、経済活動を優先することで環境向けの投資などが後回しにされ、環境対応のスピードが減退するというシナリオ(b)も想定されます。
環境ビジネスの加速化シナリオ(a)が現実となれば、環境ビジネス機会の高まりが期待される反面、生産拠点における環境負荷の高い火力発電のような設備への風当たりが強まるといったようなことがリスクとしても考慮が必要となります。
逆に、(b)のように環境対応に対する機運が弱まるようだと、高い収益性を見込んでいた環境ビジネス向け製品の付加価値が減少するといったことがリスクとなります。

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ビジネスリスクを感知するためのシナリオと先行指標の設定

コロナ起因の不確定要素が与える業界影響は、現在進行形ということもあり非常に複雑性が高く、現時点ではどう転ぶか不透明と言わざるを得ません。しかしながら、将来的な変化を確実に捉えるというのは非常に難しいことではありつつも、各シナリオの進退の予兆となり得るような先行指標は設定し注視しておきたいところです。

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参考URL

デロイト トーマツコンサルティング 石油・化学インダストリー
デロイト トーマツ & Anaplan 次世代コネクティッドプランニング


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