FP&AがVUCAの時代に企業経営や計画業務に果たす重要な役割

FP&AがVUCAの時代に企業経営や計画業務に果たす重要な役割

現在、企業をとりまく外部環境は「VUCA」のキーワードが示すとおり、「Volatility(不安定)、Uncertainty(不確定)、Complexity(複雑)、Ambiguity(不明確)」な状況が増しています。政治的対立による貿易摩擦の激化、未知のウイルスの流行による社会・経済活動の自粛、あるいは原油価格の大幅な変動などによる事業環境の急変は企業経営に大きな影響を与えます。このように日々刻々と変化する経営環境を乗り切るには管理会計に基づき自社の経営を阻害する要因を早く発見し、分析を行い財務面から経営幹部の判断をサポートする役割を果たすFP&Aの重要性が増しています。FP&Aとは何か、FP&Aが企業経営や計画業務に果たす役割について解説します。

FP&Aとは

FP&A(Financial Planning&Analysis)とは、企業の財務に関する中長期的な計画の立案や業績管理のために必要なデータの集計・分析、および予測などを行い、経営幹部の戦略や計画の達成を財務面から支援する職種のことです。具体的には、管理会計や財務会計などに関する深い知識を活用して予算や月次・四半期・年次のフォーキャストの作成、投資や経費の実績の分析、ワーキングキャピタル(運転資本)の改善のための施策の検討などを通じて長期的な利益、キャッシュフロー、および株主の投資に対する利益還元の最大化を目指します。日本では、FP&Aの専門部門・職種がある企業は少なく財務・経理部、経営企画部、あるいは各事業部内の事業企画・原価企画などを担当する部門で、FP&Aに近い業務が行われています。一方、欧米企業ではFP&Aは、公認会計士(CPA)や経営学修士(MBA)の資格を所有し、管理会計の専門職として活躍できる職制や場があり、FP&A からCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)などへキャリアアップが可能です。

FP&Aが企業経営や計画業務に果たす役割とは

1.企業経営に果たす役割

・業務管理と財務分析のスペシャリストとして経営方針に対して専門職の立場から必要かつ適切なアドバイスをする。
・経営や各事業部門の管理会計や予算実績管理など経営において重要なKGIやKPIの集計、分析、予測などを行い、意思決定を支援する。

2.計画業務に果たす役割

・正確な予算、予測、分析、レポートをタイムリーに提供し、より質の高い、より迅速な意思決定を支援する。
・収益性モデルや価格設定モデルを構築し、コスト管理を自動化。収益性の高い成長を促進し、キャッシュフローを最大化する。
・企業がさらされる可能性のあるリスクに対処するための深い洞察を示唆し、経営者がベストプラクティスを採用できるように支援する。
・資本支出から設備投資まで、財務および運用計画を連携させ、戦略を実践へとつなぐための時間を短縮する。

3.FP&Aが企業経営と計画業務のために行う業務

FP&Aの役割は、財務・会計知識をベースとした一般的な管理会計に関する業務だけではなく、もう一歩、経営に深く関与したアドバイスを行います。月次、四半期、年間ベースでの目標達成に向けて売上とコストを予測・管理することで「今期・来期はどうなるか」の短期的な見通しを立てるだけではなく、中長期的な経営に関する展望を持ち、予測し、あるべき姿に落とし込んでいきます。そのため、世界的な政治・経済・金融・社会・技術進歩など経営に影響を与えるあらゆる動きに精通して経営リスクになりそうな事柄があれば経営幹部に向けてアラートを上げ、さらに解決策をアドバイスし、経営幹部や事業部組織を動かすことまでをFP&Aは職責として果たします。

近年はAI(人工知能)の進化でデータ分析や業績予測の確度や速度が上がったことから、FP&Aに期待される業務内容や役割が変わりつつあります。これからのFP&Aは、データの分析はAIに任せ、得られた分析結果から今後どういった経営を行うべきか、あるいはどのように事業展開していくべきかについて数字に基づいたロジックだけで説明するのではなくストーリーとしてプレゼンテーションができるクリエイティブでコンセプチュアルなスキルが求められます。このようにFP&Aには、人を動かす影響力が必要なことから専門知識を使いこなすハードスキルだけでなくコミュニケーション、ネゴシエーションなどを発揮できるソフトスキルであるヒューマンスキルも強く求められます。

日本企業と欧米企業でFPA機能を果たす部門の違い

日本企業には、欧米企業では一般的なCFOやその配下にあるFP&Aの役割を担う専門の職種・部門がないのが一般的です。多くの日本企業では、FP&Aに近い役割は経営企画、経理・財務などの部門の一業務としてとらえられ、経理・財務と経営企画の業務を兼ねたような職種として経営目標を理解したうえで業務管理や財務分析を行い、企業戦略をサポートする役割を果たしています。しかし、日本企業では欧米企業のFP&Aのように積極的に経営に参画し、アドバイスをすることは行われていません。

一方、欧米企業では、CFOの配下のFP&Aが本社のコーポレート部門だけでなく、事業部組織では各事業部に、職能別組織では営業、生産、技術、人事などの各部門にも通常配属されるマトリックス組織で運営されています。本社以外の部門に配属されたFP&A担当者は、現場の定例会議に出席して業務への理解を深め、その部門のメンバーとの信頼関係を築きます。所属チームの中長期経営計画、単年度予算、業績予想をとりまとめ、本社のFP&AやCFO組織と連携して予算を確保する、業績目標の進捗を管理し、課題があれば解決に導きます。さらに、新製品・サービスの開発にも携わり、損益計算から投資の効果測定、会社全体の中長期戦略に与える影響まで検討し、新製品・サービスを世の中に生み出すまでの役割を果たします。

今後、迅速かつ正確な経営判断を財務面から的確な支援ができるFP&Aの機能が日本企業においても強く求められるようになるでしょう。

FP&A機能の強化には実務面での課題もあります。
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日本企業でFP&Aが根付かなかった理由

日本企業にFP&Aが根付かなかった大きな理由のひとつは近年、その制度が崩壊しつつある終身雇用制度と、もうひとつは経営の意思決定方法にあると考えられます。日本企業では、原則として定年まで勤務することを前提に雇用され、雇用にあたっては特定の専門能力も評価されますが、それ以前に、またそれ以上に雇用する企業にふさわしい人物かどうかについて評価されます。そのため、大学などで専攻した専門知識とは関係のない部門に配属されることも多々あり、一部の職種を除き専門家としてではなく多様な職務をこなせるゼネラリストであることが期待されてきました。つまり、企業に帰属し、企業の一員として何でもこなすことがまず優先され、どのような分野の仕事を専門家として成果をあげるかは二義的な問題とされたことから、FP&Aの職種をはじめ一部を除き専門家が育ちにくい文化が日本企業にあったからと考えられます。
一方、欧米企業は、従業員を特定の職務をこなす専門家として雇用契約を締結することから果たすべき職務は明確で、その職務を企業が期待する能力で職責が果たせなければ解雇されます。逆に、従業員も自分のスキルに対してもっと良い条件の企業があれば転職します。そのため、FP&Aの職種だけでなく専門能力の高い従業員がその能力を生かせる職が用意されています。

また、日本企業の多くは意思決定を集団による合議で行います。一部の専門家の意見も取り入れられますが、意思決定までに何度も議論されることから、最終的には専門家としての知見がなくても参加者全員によって必要な知見を補うことで意思決定ができるため、FP&Aのような専門家や専門職種が育たなかったと考えられます。他方、欧米企業では、主に責任を担っている個人による意思決定が尊重されることから担当業務に関する深い知識、スキルが求められます。

FP&Aは経営者のビジネスパートナーで経営の羅針盤

FP&Aは財務・経理担当として業績を分析するだけでなく、先見の明を持つビジネスのスペシャリストとして、経営者にアドバイスする役割が強く期待されています。不確実性の高まる現代の経営環境では、FP&Aは経営者のビジネスパートナーで経営の羅針盤ともいえる重要な存在です。

記事提供元:株式会社イノーバ』