調達戦略の基本とフレームワークを理解して企業競争力を高める

調達戦略の基本とフレームワークを理解して企業競争力を高める

企業の人件費を除く総調達コストが売り上げに占める割合は、業種によって異なりますが、ウェイトが低い業種でも約30%あり、一般的には約60%から80%と非常に高く、そのコストを5%低減できれば、直ちに経常利益率の改善に直結します。この改善された経常利益を売り上げで稼ぎ出すには、例えば経常利益率10%の優れた企業でも売り上げを約5割も伸ばさなければ達成できません。また、現在の経営環境は不確実・不透明性が高く、需要に見合った供給ができる調達をタイムリーに実現できなければ、売り上げの機会損失や在庫過多を招き、経営に多大な悪影響を与えます。さらに、利益率が改善できて、売り上げロスや不良・不動在庫を軽減できるとキャッシュフローが改善できて資金繰りに余裕が生まれる効果もあります。

そのため、厳しい経営環境が継続するなか、このような大きなメリットをもたらす調達コストの低減や需要予測に基づいた調達を可能にする調達戦略の重要性が増しています。そこで、調達戦略の基本について、および調達のためのフレームワークなどについて紹介します。

調達を成功させるための基本戦略

調達を成功させるために必要な価格、品質、納期、安定供給などについて、満足できるレベルにするための基本的な戦略は以下の7項目です。

1.    新規取引先の開拓

価格、品質、納期などに問題のない取引先が多いと、取引先との関係も良好で新しい取引先をあえて開拓することはリスクが生じる恐れがあるため、必要ないと考えてしまいます。しかし、新規の取引先の開拓をしないことは、より競争力のある価格での仕入れを実現することを自ら放棄していることになり、新規取引先の開拓は常に心がけていなければなりません。調達先を変えた場合のリスクを懸念することは次のステップであって、最初からリスクを考慮して新規開拓をおろそかにすることは避けなければなりません。

2.    コンプライアンスの遵守

調達業務に限らず契約の遵守は重要ですが、特に調達業務においては需要と供給の関係から仕入れを約束した数量を削減する変更をしたくなることが多く発生します。サプライヤーにとって契約済みの納入予定の数量が削減されることは大きなリスクとなるため、契約した数量は引き取らないと、そのリスク分は価格に上乗せされる可能性が高くなります。これを避けるには需要予測の精度を上げることが重要です。

3.    SRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)による調達プロセスの効率化や最適化

SRM(Supplier Relationship Management)とは、サプライヤーとの関係を戦略的にマネジメントしていくことです。そのためにはサプライヤーを対等な関係のパートナー企業とみなし、サプライヤーへの情報を秘密にするのではなくオープンにしてWin-Winの関係になることを目指す必要があります。これにより、仕入価格のみではなく、品質、コスト、納期、技術・開発力など総合的に優れた調達を実現できます。

4.    部分最適と全体最適のバランス

調達部門だけの最適化を図ると部分最適化ができますが、品質低下や納期遅延などを招き、クレームや売り上げの機会損失で全体最適化を達成できません。こうしたリスクを回避するには、品質、コスト、納期で最適となる調達を実施する必要があります。そのためには、SCM(Supply Chain Management)やS&OP(Sales and Operations Planning)によるオペレーションが必要です。

5.    1社集中調達と分散調達によるコストとリスクのバランス

1社から集中調達することで大量購入によるディスカウントでコストを低減できます。しかし、1社や1カ国による集中調達は以下のリスクの回避が困難になるため複数社・複数国からの分散調達を検討することが必要です。

・為替リスク、調達国の税率変動リスク

・原材料の高騰リスク

・集中調達による生産・品質トラブルの発生による納期の遅延・納品の不可リスク

・集中調達によるサプライヤーの価格決定力の増大リスク

・サプライヤーの倒産リスク

6.    グローバル調達、グリーン調達対応

ビジネスのグローバル化が進展するなか生産拠点の海外移管やコストの安い資材・部品を調達するためにグローバル調達に積極的に対応していく必要があります。また、環境問題の深刻化によって、官公庁や環境に配慮した企業は、環境負荷の小さい製品を優先するグリーン購入を行うことから、環境への負荷の小さい製品を製造するためのグリーン調達への対応を強化していく必要があります。

7.    調達のノウハウ・情報の共有とスキルアップ

ビジネスにおける競合の激化や複雑化する昨今、調達部門は企業経営を支える戦略部門とならなければなりません。しかし、調達部門は、他部門と比較して調達に関するノウハウや情報が属人化されて一元管理できるための蓄積ができておらず、共有化が遅れています。調達情報のツールの活用を行い、熟練バイヤーの優れたノウハウを生かせるようにする必要があります。その結果、全調達担当者のスキルアップができて資材調達コストの低減を効率的・効果的に実現できます。

調達戦略のためのフレームワーク

調達戦略のためのフレームワークにはいろいろありますが、以下に3つ紹介します。

PMA(Procurement Maturity Assessment)

PMAとは、イギリスのHawtrey Dene社が提供し、IBM社も使用している企業の調達機能の成熟度を測れるフレームワークのことです。「業務オペレーション」「サプライヤー管理」「戦略」「組織」「IT技術活用」「リーダーシップ」など全部で8項目から調達機能の分析・確認ができます。

PCF(Process Classification Framework)

PCFとは、アメリカ生産性品質センター(APQC)が発表した標準的な業務プロセスを分析できるフレームワークのことで調達業務の分析も可能です。APQCビジネスモデルともいいます。業務を上位プロセスモデルとして基幹業務プロセスを7つ、支援業務プロセスを6つに分類。これをさらに細分化した下位のプロセスモデル(92の基幹業務プロセスと123の支援業務プロセス)から成り立っています。また、これらのプロセスが持つ機能、性能を評価する評価基準があり、その基準に基づいて業務の分析が行えます。

ROSMA(Return on Supply Management Assets)

ROSMAとは、アメリカのA.T.カーニー社が開発した調達業務に関わる費用対効果を評価できる調達業績の測定モデルのことです。ROSMAを一定の期間ごとに算出することで調達部門の成果と改善余地を定量的に把握できるため、より効果的な調達業務の改善が可能です。

現状の調達部門の課題と調達戦略が必要な理由

調達業務は、企業ごとに調達ポリシー、調達の制度的・システム的な違い、調達する資材や部品の種類の違いなどから課題が共通しているわけではありませんが、一般的には以下の課題のいくつかを抱えています。

・調達担当者が個別に調達業務を行い、業務がブラックボックス化し、調達プロセスの見える化が実現できず課題そのものが見えていない

・ブラックボックス化していることから内部統制が不可能で効果的なコスト削減ができないだけでなく、不正行為やそれによる業務の非効率さ、責任の所在が曖昧になっている

・調達状況が正確にリアルタイムに可視化して把握できておらず、効果的な改善策が実施できていない

・業務フローの統一や調達基準の統制・共有化ができておらず、発注業務が煩雑になり、ミスが多く発生するなど効率的な発注ができていない

その結果、調達業務で最も重要な「コスト」「品質」「納期」についてベストな調達を実現できていません。これらの課題を解決するには、購買・調達プロセスの見える化を実現し、調達業務の進捗情報を迅速に集約・共有する調達戦略が必要です。

調達戦略は企業活動の要

市場の不透明性や不確実性が増すなか、また経済の低迷で売り上げ・利益を簡単に伸ばせないため、コスト競争力を高め、利益を効率的に生み出し、棚卸資産の効率化・最小化を図れる調達部門の果たす役割の重要性が高まっています。そのため、企業活動の要として調達戦略を実現していく必要があります。

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参考:

 

『記事提供元:株式会社イノーバ』