Anaplan によるシナリオ プランニング パートI : 「What-if」(仮説検証) の力

Anaplan によるシナリオ プランニング パートI : 「What-if」(仮説検証) の力

VUCA という用語は、変動性 (Volatility)、不確実性 (Uncertainty)、複雑性 (Complexity)、曖昧性 (Ambiguity) を意味します。この用語がビジネスの世界で初めて使用されたのは 1980 年代後半でしたが、2020 年という、現代の世界にとって未曾有の試練となったこの一年ほど、この用語の持つ重要性が大きかった時期はありませんでした。この状況下で、世界中の組織や企業は協力して VUCA という問題に対応する方法を模索しましたが、その取り組みのなかで FP&A (ファイナンシャル プランニング及びアナリシス) の領域における新しいツールとして多く採用されたのが、シナリオ プランニングでした。シナリオ プランニングの理論については非常に多くの情報が出回っていますが、本稿では、Anaplan のソリューションにおけるシナリオ プランニング機能の構築において、私が使いやすく効果的であると考える、実用的な考慮事項とガイドラインをご紹介し、例を示したいと思います。

予算編成と業績予測に留まらない取り組み

2020 年は、誰もが想像さえしなかったような変化が起こった年でした。従来受け入れられていなかった、又は想定もされなかった障壁やビジネス運用モデルが崩壊し、多くの企業や組織が買収されて舞台から退き、従来の常識では考えられなかったビジネスがきわめて短期間に生まれました。2020 年のかなり早い時点で、ほとんどの組織にとって、作成したばかりの予算の有効性が完全に (又はある程度は) 損なわれたことが明らかになりました。そこで予算編成に代わり採用されたのが、より頻繁な業績予測でした。シナリオ プランニングは、予算編成 (いまだに実施されている場合) や業績予測にとって代わるものではありません。むしろ、関係者間で合意された想定条件や実施すべき行動方針に基づいて 1 つのプラン又は業績予測を策定するための、最初のステップと考えるべきものです。

「3 つの What」の検討

基本原則に従いつつ、私はよく CFO の役割について検討する際に、3 つの重要な質問を考えてみます。

  1. What?: 何が起きたのか、又は起こる可能性があるのか
  2. So What?: その出来事によりどのような影響があるのか
  3. Do What?: 出来事の発生後にどのような行動を選択できるのか、現在の時点で事前に何ができるのか

起こり得る出来事とその影響を特定することだけに集中しないことが重要です。なぜなら、アクションに集中することこそより重要だからです。FP&A の目的は、組織が効果的な意識決定を行えるよう指針を提供することです。意思決定においては、入力データの変化とその影響だけではなく、変化が起こった後に組織が取り得るアクションについても検討する必要があります。さらに重要なのは、リスクの緩和やビジネスチャンスを開拓するためのポジショニングにつながる、組織が現在実行できるアクションを考慮することです。この観点に基づき、一部の CFO は最近、シナリオ プランニングを一歩進めたシナリオ マネジメント[i]という用語を使用しています。

シナリオ プランニングにおける主要なステップ

シナリオ プランの策定と実行における主要なステップ [ii] には以下が含まれます。

  1. ベースとなる業績予測モデルを作成します (ドライバーベースが望ましい)。
  2. 一連のドライバーや想定条件を活用して、起こり得る幅広いシナリオ (可能性の高いものは無論のこと、低いものも含める) を構築します。
  3. シナリオを絞り込み、理想としては統計学的手法を用いて、ベース シナリオを含む最終候補を選定します。
  4. 実行し得る一連のアクション (「プレイブック」) を策定し、各シナリオに応じて内容を選択して適用します。
  5. リスクを評価し、重要な指標を特定します。
  6. 事前に実行し得るポジショニングのアクションとそのコスト及び価値を特定し、また可能であれば、すべてのシナリオにおいて実行できリスクの緩和や成長のためのポジショニングに役立つ「リスクのない手段」も検討します。アクションのうち最も可能性の高いものや一貫して有益性が最も高いものについて、詳細な運用上のプレイブックを確立します。
  7. 現行の財務計画業務に、シナリオ プランニングを組み入れます。

Anaplan ソリューションによる上記の手順の実行

「3 つの What」は、Anaplan のソリューションでより効果的なアプローチを構築するためのフレームワークとなります。

ドライバーベースの業績予測モデルの構築

  • 可能であれば、既存の業績予測モデルからスタートします。一般的には、概要レベルのモデルを構築することが有効です。たとえば、製品の詳細は事業部門レベルや組織構造レベルにまとめることができますし、顧客グループは集約しても構いません。また、モデリングは月次でなく四半期ごとでも可能です (ただし対象期間は長く設定するべきであり、2 ~ 3 年が望ましい)。
  • 収益のドライバーを考慮し、オーバーライドに対応した入力データを設定することで、シナリオの構築を迅速化できます。必須の入力データをすばやく処理できるよう、収益分析のディメンションは適切に設定してください。

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ビジネス規模の予測におけるドライバー率とオーバーライドの使用
  • 人員数ベースの変化は、最も影響の大きい変化の一つです。人員数に連動して変化するコストを考慮に入れ、人員あたりのコスト率を策定します。次いで、各領域 (新規顧客、注文、サプライヤーなど) の主要ドライバーに基づく人員あたりの生産性率を測定します。
  • 事業規模の影響を受けるコスト項目と、事業規模の変化による影響を受けないコスト項目を特定します。後者は「固定費」ではないことに注意してください。たとえば、財務部の人員コストは伝統的な会計学の観点では「変動費」ですが、事業規模に伴い大きく変化することはあまり考えられません。

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人員および運用コストの予測における、規模の影響度、変動性、固定費成長率の使用

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  • 活動ベースのコスト (ABC: activity-based cost) モデルを使用している場合は、それを利用してドライバー及びその関連コストをより深く理解することができます。
  • ABC モデルを使用していない場合は (又は使用している場合でも追加として)、回帰分析などその他の分析ツールを使用することで、ドライバー、収益、コストの間の関係を確認できます。
  • 適宜、貸借対照表の重要項目 (現金、売掛金、投資、棚卸資産、借入金) を予測するための概要レベルの機能を追加して、各種の資本支出を算入するための機能を利用できるようにします。

シナリオの構築

  • Anaplan のソリューションでは、このユースケースでシナリオを扱うにあたっては「バージョン」を使用せず、番号付きリストとして扱うことをおすすめします。そうすることで、新しいシナリオをすばやく追加する、あるシナリオの想定条件を他のシナリオにコピーする、シナリオ間の比較を手軽に行うといった操作が可能になります。切り替えの代わりに時間設定モジュールを使用して実績と予測の期間を設定し、ダイナミック セル アクセス (DCA) を使用してデータ入力を予測期間のみに制限します。入力データは、アクションや戦略のための「フック」(きっかけ) として統合できるようにしておきます。
  • 予測モジュールに、リスト ディメンションとして「シナリオ」を追加します。本ブログ シリーズのパート 2 では、アクション コントロールを組み入れてシナリオにアクションの変動要素を追加します。
  • 幅広いシナリオと、それらに対する入力データを特定します (これは「What」にあたります)。ここでは起こる可能性がある出来事のみを考慮し、結果として取る行動 (アクション) は考慮しません。たとえば、特定の製品ライン、地域、顧客セグメントの収益に桁違いの変化 (良い変化か悪い変化かは問わず) があった場合、どうなるかといったことです。D.I.S.C.O. の原則に従い、シナリオごとにディメンション化された入力データの変動要素を、計算と出力データから分離します。Hyperblock の機能を使用して、各変動要素についての広範な入力データを生成し、多数のシナリオを構築する [iii] という方法も検討してみてください。
  • 各シナリオの結果を測定します。その変化の短期的および長期的な影響はどのようなものになるでしょうか(これは「So What」にあたります)。各シナリオが実際に起こる可能性と、起きた場合の影響を特定します。たとえば、事業が継続不能になる可能性があるのはどのようなシナリオかなどを特定します。なお、結果に可能性を掛け合わせて乗算を行うことは、魅力的ではありますが必ずしも適切とはいえません。これは、2020 年の状況を想い起こせば明白です。あのような事態を想定できた人はほぼ皆無でしたが、結果はどの尺度から見ても非常に大きなものになりました。

戦略とアクションの策定

  • 幅広いシナリオと生じ得る結果を特定したら、アナリストは次に、事前に又はシナリオの進行中に実行できるさまざまな「戦略」(これが「Do What」にあたります) の適用に進むことができます。たとえば、重複するアセットの作成にはコストがかかるものの、その投資の NPV はシナリオを問わずプラスとなるようなケースが考えられます (その場合はすぐに採用する必要があります)。

本ブログ シリーズのパート 2 では、Anaplan のソリューションで戦略を策定してシナリオに適用する効果的な方法をご紹介します。


[i] 例としては、Coca-Cola 社の CFO、John Murphy 氏のインタビューを参照。
[ii] 近日公開予定の「AFP Guide on Scenario Planning」(シナリオ プランニングのための AFP ガイド) の調査結果をまとめて作成。
[iii] このトピックについては、McKinsey 社の記事に記載された興味深い見解を参照。


執筆者について

認定 Master Anaplanner、Mitch_Max
Mitch Max 氏は、コンサルティング パートナーとして Anaplan と 9 年間協業している BetterVu 社の創業者です。Max 氏は Lionpoint Group とも戦略的提携を結び、アソシエイト ディレクターとして在籍しています。Master Anaplanner 及びソリューション アーキテクトとして活動しており、FP&A の分野で 30 年を超える経験を積んだ CPA 及び熟練のコンサルタントとして活躍しています。Association of Finance Professionals の FP&A Advisory Board の名誉会員であり、Beyond Budgeting Round Table の初期メンバーも務めました。

英語版記事はこちらScenario Planning in Anaplan, Part I: The Power of 'What If'